シュワシュワという音とともに、ふんわりと広がるリンゴの香り。甘いのかと思えば、意外と辛口で、新鮮なリンゴそのものの味がギュッと詰まった味わいは、ワインやシャンパンと全く異なるものだ。
シードルは、リンゴ果汁を使用した醸造酒のこと。フランスやイギリスでよく飲まれている飲み物で、近年は、日本でも人気を集めており、ここ長野県でも国産シードルが続々誕生。地域の協力のもと、長野県生まれのシードルの普及を目指すさまざまな取り組みが行われている。
リンゴはふじをはじめさまざまな品種を生産
飯田・下伊那地区は長野県最南端のリンゴの主要産地
昨年は12万トン以上ものリンゴが収穫された長野県はリンゴの出荷量全国2位を誇るリンゴの産地だ。長野県南部に位置する飯田・下伊那地域もリンゴの主要産地の一つとして知られ、観光農園で大阪や名古屋から集客することにより知名度を上げてきた。
また、ジュースなどの農産物の加工も30年以上の実績があり、常に高品質なモノづくりが行われてきた。
リンゴの生産者と醸造家の熱い思いが形になって、多様なシードルが生まれる
南信州シードルが現在の盛り上がりに至る始まりは、2013年(平成25年)のこと。国際りんご・シードル振興会が、シードルの知識を身につけ、人々にシードルの魅力を伝えるスペシャリストを養成する「ポム・ド・リエゾン養成講座」を開講。これまでに163名の資格者を輩出している。と同時に農業者が手掛ける委託醸造シードルも増え、醸造所も次々と創業して、今では7軒の醸造所がそれぞれに個性豊かなシードルを生み出している。
2019年5月に開催された「長野シードルコレクション」
2017年(平成29年)から始まった長野シードルコレクションは、飯田市りんご並木で毎年開催(2020年は中止)。JR飯田線では南信州シードル列車(主催:南信州シードル協議会)が運行されるなど、シードルを味わい比べることができるさまざまなイベントも行われている。
7つの醸造所だけでなく、リンゴ生産者の委託醸造によりさまざまなブランドが誕生
飯田・下伊那地域の穏やかな気候が生み出したシードルは、辛口が主流でいずれもすっきりとした飲み口が魅力だが、リンゴの甘みを残した甘口のブランドもある。リンゴの香りもとても華やかに食卓を彩り、フレンチやイタリアンだけでなく、和食や中華にもよく合うおいしいシードル。南信州へ訪れて、または、ご自宅へ取り寄せて、ぜひ味わってみてほしい。
*イベントや最新情報は、「NPO国際りんご・シードル振興会」サイトや「南信州シードル協議会」サイトをご覧ください。