今や小学校の給食の人気定番メニューとなっている
餃子で知られる町は数あれど、三重県津市で食べる「津ぎょうざ」はひと味違う。見た目も一皿に5個ほど並ぶ焼き餃子とは全く違うものだ。「津ぎょうざ」、はまるでこぶりのカレーパンほどの大きな揚げ餃子。外はぱりぱり、中にはジューシーな餡がたっぷりと詰まって、肉も野菜も一緒にとれる。ボリューム満点で1つでも食べ応え十分という優秀なおかずである。
揚げてあるため、外はぱりぱり、中はジューシーだ
「津ぎょうざ」は、1985年ごろに津市教育委員会の栄養士によって開発された小学校の給食用のメニューだった。食べ盛り、伸び盛りの子どもたちの栄養と満足感だけでなく、給食調理員が作る際の手間を考えて作られたため、餃子の皮は直径15cmという特注の大きな皮を使用。おいしさはもちろん、見た目にもインパクトのある「津ぎょうざ」が完成した。
「B-1グランプリ2019明石」でゴールドグランプリを受賞した「津ぎょうざ小学校」
小学校の給食でしか食べることができなかった「津ぎょうざ」が初めて販売されたのは、2008年のこと。三重県下最大級の「津まつり」で初めて売られ、即完売となり話題になった。これをきっかけに「津ぎょうざ」をご当地グルメとして町おこしをしようという活動が始まり、市内の飲食店約20店舗が市販を開始した。
給食で食べていた人には「懐かしく」、食べたことのない人には「新しい」味は、地元の人たちの熱い思いとともに徐々に全国的にも知られるようになり、「B-1グランプリ2019明石」では、市民団体である「津ぎょうざ小学校」がゴールドグランプリを受賞した。
津藩の初代藩主、藤堂高虎公は津の基礎づくりを行った
古くから中国との貿易港の一つとして発展してきた三重県津市は、室町時代から戦国時代には伊勢国司北畠氏が中世都市を作り繁栄。江戸時代には、築城の名手として知られる藤堂高虎が伊勢国・伊賀国の領主となり、津城を中心とした城下町として、さらには街道を整備したことで、宿場町としてもにぎわった。
現在は本丸・西の丸・内堀の一部を残す「津城跡」
現在も当時の面影が残る市内には、「津ぎょうざ」を扱う店が30ほど点在。
「①直径15cmの皮を使用し、②揚げ餃子であること」という定義に基づき、それぞれにまごころこもった「津ぎょうざ」が作られている。中身の餡は店のオリジナルなので、それぞれの味を食べ比べてみるのも楽しいだろう。
津市民のソウルフード「津ぎょうざ」。津を訪れたらぜひ味わいたい逸品である。