シンガポールで「デザート」というと皆さんは何を思い浮かべますか。
一年中夏ということから、マンゴーやパパイヤなどの南国フルーツを使ったデザート、かき氷、お土産として有名なパイナップルケーキなどのイメージが強く、ケーキやチョコレート、アイスクリームといった西洋風のスイーツを思いつく方は少ないのではないでしょうか。
しかし、実際シンガポールにはたくさんのおしゃれなカフェやレストランがあり、いたるところで素敵なデザートに出会うことができます。本日はそんなシンガポールで活躍するパティシエ「ジャニス・ウォン(Janice Wong)」と、彼女が手がける芸術的なスイーツやお店についてご紹介します。
ジャニス・ウォンは、「アジアベストレストラン50」の最優秀パティシエ賞を2013年、2014年連続受賞しているシンガポール人の女性シェフです。
シンガポール国立大学を卒業後、パリの名門料理学校「ル・コルドン・ブルー」に入学。卒業後は世界の有名レストランで技を磨き、ピエール・エルメ氏やオリオール・バラゲ氏などに師事されるなど、1983年生まれの若手シェフにも関わらず、ものすごい経歴の持ち主です。
2007年、ホランドビレッジという場所にスイーツとお酒を一緒に楽しめるバー「2am:デザート・バー(2am:dessertbar)」をオープンしたのをはじめとし、シンガポール国内や海外に数店舗を展開しています。
シェフであり、アーティストでもある彼女。
「edible art=食べられるアート」と自ら名付けるデザートたちはまさに一つ一つが芸術品といえます。
実際にどのようなデザートが販売されているかをご紹介します。
まずはチョコレート。お店に並ぶチョコ―レートは、色鮮やかでまるで宝石のよう。
形もユニークで、レゴのパーツのようなブロック型のチョコレート、ボタンのような形のものと様々です。味もストロベリーショートケーキやキャラメルポップコーンなどの可愛らしいものもあれば、マンゴカレーやチリの入ったもの、ジンジャーの花のフレーバーなど珍しいものまでバラエティー豊かに取り揃えられています。
KOPIと呼ばれるシンガポールのローカルコーヒー、グラマラカという黒糖とパンダンリーフを組み合わせたもの、シンガポール土産の定番とされるBBQポークジャーキーの味などシンガポール独自の食材を使用しているものも。お土産にも最適ですし、ついついたくさん買ってしまいたくなる可愛らしさと興味深いバリエーションになっています。
生菓子では、中に色々なフレーバーのクリームが入った"Mochi"というメニューもあります。 こちらは日本の餅にインスパイアされてできたメニューとのこと。色鮮やかなお餅は目にも楽しいです。
このようなデザートを生み出してきたジャニス・ウォン。「パティシエ」だけでなく「アーティスト」という側面も持ち合わせており、自身で描いた絵を店舗に飾ることもあります。
そうした絵もただの絵画ではなく、全てがデザートとのコラボレーション。
下の写真の絵の具に見える部分は、なんとマシュマロでできています。
下の写真はチョコレートのペイントで描かれた絵で、絵の具の部分は食べることができます。 チョコレートペイントは瓶詰めになっており、お店で販売もされています。
レストランでは、お皿に盛りつけられたデザートを作りたてでいただくことができます。 今回いただいたのは2つのメニュー。
1つめは"Cacao Forest"。 ジャニス・ウォンのつくりだすデザートのすごいところは、見た目にも楽しいところ。 モコモコとした綿あめの姿に驚いてしまうこのスイーツ。なんと森に見立てた綿あめの中に、アールグレイ・ベルガモット・チョコレートムースやバニラ・ウィスキーアイス、味噌ケーキなどが入っています。
店員さんがカカオリキュールを回しかけると、中身がだんだんと見えていきます。目の前で綿あめが消えていき、中身が見えていく姿は幻想的かつ感動的な瞬間です。
味もおいしく、チョコレートのムースは濃厚でコクのあるカカオの味。そこにアルコールの入ったアイスが加わることで、より大人な味わいをつくりだしています。味噌ケーキは味噌の風味がほんのりし、とても新鮮なテイスト。こちらもアイスとよく合う組み合わせです。ジャニス・ウォンは幼少期に日本に住んでいたこともあり、デザートに日本の食材を多く使用することでも知られています。
2つ目はアイスクリーム。
お店では、メニューにあるいくつかのアイスクリームから3種類のフレーバーを選び、プレートにしてもらうことができます。
今回はパンダンリーフのアイスクリーム(グリーン)、きなこのアイスクリーム(イエロー)、高知のゆずを使用したソルベ(ホワイト)をオーダー。
どのアイスクリームにも共通するのが、風味と香りがものすごく豊かなこと。口に入れた瞬間、広がる香りや味から、素材のよさを大切にしていることがわかります。先ほどの"Cacao Forest"と同様に、きなこや高知のゆずを使用しているのは日本に影響を受けてのことだそう。逆に、パンダンリーフはシンガポールの馴染み深い食材。口当たりもよく、甘さ控えめで素材の旨みを凝縮したアイスクリームは暑いシンガポールでの休憩の際にピッタリなメニューかと思います。
デザートのお供には紅茶を。実はこの紅茶も普通の紅茶ではありません。なんとこちらはクレーム・ブリュレのフレーバーティー。
キャラメルの香りがする紅茶を口に入れると、まるで本当にクレーム・ブリュレをいただいているような感覚に。フレーバーティーで味はないので、甘いデザートといただくのに最適です。
お店ではこのようにドリンクメニューもバリエーション豊か。紅茶は、オーソドックスなアールグレイなどの他、トフィー・ポップコーンや今回頼んだクレーム・ブリュレといった珍しいフレーバーもあります。紅茶やコーヒーなどに加え、アルコールも取り扱っているため、スイーツと共にお酒を楽しむこともできます。
余談ですが、店内でお店に並べられたガラス天板の下はホワイトチョコで模様が付けられており、それも彼女の作品となっています。こんな風にデザートを彩る作品を見られるのも実際にお店にいく楽しみになります。
味だけでなく目でも楽しめる、アーティスティックな彼女のデザートたち。見栄えはもちろん、予想もしない食材のデザートを実際にいただくのはまさに貴重な体験といえるでしょう。
シンガポールにお越しの際は、ぜひ「ジャニス・ウォン」のアートなデザートの世界を体感しに行ってみてください。
〈店舗情報〉
Raffles City(お土産の販売のみ)
住所:252 North Bridge Road, B1-48, S179103
2am: dessertbar (店舗にてデザートをいただけるレストラン)
住所:21a Lorong Liput S277733
※掲載の情報は、2020年3月現在の情報です。内容は変更となる場合があります。