カリフォルニア東部にあるシエラネバダ山脈。この麓に「シエラの女王」と呼ばれる緑豊かな美しい田舎町マーフィーがある。1800年代のゴールドラッシュ時代に、金鉱産業を築いた移民によってできた歴史的な街のひとつで、ワイン愛好家にも人気の場所。ここで、カリフォルニアワインを堪能してきた。
マーフィーは20以上のワイナリーが集まるワインのメッカでもある。「アイロンストーン・ヴィンヤーズ」は、その中でも自然環境に優しい農法を実践し、ブドウ園の規模はカリフォルニアでTOP10入りするほど。ブドウ栽培と管理に優れた農家に贈られる"最優秀栽培農家賞"も受賞したことのあるワイナリーだ。
テイスティングルームは広々としたロッジの雰囲気。気さくなお兄さんが数あるワインの中から「カリフォルニアシャンパンだよ!」と、ジョークを交えながらスパークリングワインで迎えてくれた。梨やパイナップルのような爽やかな味がカラッとした気候にぴったり。
ワインで喉を潤した後は、洞窟のワイン樽の貯蔵庫へ。中に入る前から、すでに樽の強い香りが漂ってくる。中には、ワインの熟成を待っている樽や、順番待ちをしている空の樽が幾重にも重なっていた。
自社畑で収穫された良質なブドウだけを使用しているから、コストパフォーマンスが良く、安定した味のワインが作れるそうだ。それにしても洞窟をダイナマイトで広げたと聞いたときは驚いた。さすが、アメリカならでは。
広々とした敷地内を散策していると、ゴールドラッシュ時代にタイムトリップした気分になる。
"ゴールドスタンプミル"と呼ばれる金の採掘機や坑夫小屋が建っているのだ。後にレプリカだと聞いたけれど、妙にリアルな感じがしていた。
ギャラリーやミュージアムでは、ゴールドラッシュ時代のことを学ぶこともできる。実際に使われていた金の採掘道具や当時の写真、そして、この場所で見つかった金塊の標本も展示されていた。1880年代以降、北米で採掘された世界最大の金らしいが、こんな大きな宝がこの土地に眠っていたなんて!
金を求めてやって来た外国からの移民が、ぶどうの苗木をこの大地に植えたからこそ、カリフォルニアワインは生まれた。ゴールドラッシュとカリフォルニアワインは深い関係があるのだ。ここのワイナリーは、その歴史をとても大切にしているようだった。
ワイナリー内では、あらゆる所でワインと食事のペアリングが楽しめるのも嬉しい。洞窟のセラーの中、ミュージアムの前、そして天気のいい日は庭園でも!
果実味豊かな白ワインのビオニエはサーモンと。カリフォルニアを代表するスパイスの効いた赤ワインのジンファンデルはイチジク料理と。次のスポットまでワインを片手に散策できるのは、ワイナリーだからこそ。1日をゆっくり過ごせる気持ちのいい場所だった。
山の上のワイナリーを後にし、次はテイスティングルームが10軒以上あるマーフィーのダウンタウンへ。いろいろ目移りしてしまうけれど、「ブロール・マウンテン・ワイナリー(Broll Mountain Winery)」のテイスティングルームは、洗練された雰囲気。ポアラーやチーズカッターなどのお洒落なデザインの小物も揃っていて、ついつい財布の紐が緩んでしまう。
ゴールドラッシュによって築かれた街、カラベラスカウンティのマーフィー。「この土地は、金塊が埋まっているような鉱物や岩の多い土壌だからこそ、香り豊かで個性のあるぶどうが育つんだよ」と、ワイナリーのお兄さんが話してくれた。知れば知るほど奥が深いカリフォルニアワイン。飲むだけじゃない、学びがあったワインの旅だった。
<取材協力>
カリフォルニア観光局:https://www.visitcalifornia.com/jp
ユナイテッド航空:https://www.united.com/
カラベラス観光局:https://www.gocalaveras.com