北カリフォルニアのワイナリー「ブライス・ステーション(Brice Station)」

カリフォルニアのおすすめワイナリー

カリフォルニアワイン&食紀行Vol.1
2019年11月29日
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海外旅行
旅行記

その土地でしか出会えない味は旅を豊かにしてくれる。ローカルの人から愛される味だからこそ、旅する人も惹きつけられる。北カリフォルニアのカラベラス郡マーフィーにある森に囲まれたワイナリーとベーカリー。ここでそんな味に出会った。

自然と調和したワイナリー「ブライス・ステーション(Brice Station)」

緩やかなカーブが続くハイウェイを走らせ、森に少し入るとひっそりたたずむ家族経営のワイナリー「ブライス・ステーション」がある。カリフォルニアを縦断するシエラネバダ山脈の麓にあり、もともと陶器、美術、鍛治、機械印刷などのビジネスから始めた歴史をもつ、珍しいワイナリーだ。

森に囲まれたワイナリー

ワイナリーは森に囲まれ、ところどころに植えられた花も自然の草木に調和してとても気持ちがいい。つたで完全に覆われたテイスティングルームは、まるでおとぎ話に出てきそう。中に入る前からすでに心が踊ってしまう。

ワインのために作られたぶどうジュースに感動

3代目オーナーのドロレス・マストさん

笑顔で迎えてくれた女性は3代目オーナーのドロレス・マストさん。「ワインと発酵する前のぶどうジュースを飲み比べて欲しいの!」と彼女。味がどのように変化するかを味比べさせてもらうことに。

赤ワイン品種メルロー100%の発酵前のジュース

テイスティングルームに案内され、赤ワイン品種メルロー100%の発酵前のジュースを注いでくれる。ワインのために作られたブドウだからと期待はしていなかったが、なんと糖度が25.4%もあり、驚くほどに美味しい。まさに甘みと旨味が凝縮されている。だからこそ発酵すると、香り高い味わい深い赤ワインに生まれ変われるのだ。

気さくなワイナリーの人たち

朝摘みを終えた男性と採れたてのブドウ

その後、樽の貯蔵庫やワイン畑へ。ここはカリフォルニアでも標高の高いワイナリーとしても有名。畑は高低差があり斜面になっているから、ブドウは陽の光をたくさん浴びて育つ。朝摘みを終えた男性が「最高のブドウだよ!」と、採れたてブドウを一粒くれた。口に頬張ると太陽をたくさんに浴びて育った健康的で甘いぶどうの味が口いっぱいに広がった。

トロレスさんのご主人のスチュアートさん

トロレスさんのご主人のスチュアートさんも、手は泥だらけにして働いていた。ワインメーカーとしての誇り高い姿が眩しいほどに素敵だった。「地元の人やわざわざここを訪れる人に楽しんでワインを飲んでもらいたい。」と話してくれたマスト夫妻。

ワインのテイスティングだけでなく、ジュースとの味比べや、採れたてブドウを食べられるのもここに来たからこそ。暖かく迎えてくれる二人の元で育ったブドウで美味しいワインが出来るのだ。

リンゴを豊富に使ったベーカリーショップ「レッド・アップル(The Red Apple)」

ワイナリーを後にし、近くのベーカリーショップ「レッド・アップル」へ。その名の通り主にリンゴを使ったドーナッツ、パイ、シロップ、ケーキ、ジャムなどを扱っている。秘伝のレシピは経営するバンチ家に伝わるものだとか。爽やかなリンゴの香りはお店の外へも漂ってきた。

ベーカリーショップ「レッド・アップル」のリンゴ

1903年、最初に植えられたリンゴの木は、なんといまも健在で、美味しい実がなるという。20種以上の品種を育てていて、普通のスーパーでは見ることができない珍しいものもある。

看板メニュー「アップルサイダードーナッツ」

看板メニュー「アップルサイダードーナッツ」。"サイダー"とは「炭酸」のことではなく、無濾過、無加糖、ノンアルコールのリンゴジュースのことを"アップルサイダー"と呼ぶのだ。それが練りこんであるドーナッツ。焼きたてのふわふわのドーナッツをちぎると、中からは湯気とリンゴの香りが一気に広がる。

カラメルソースと相性抜群のアップルダンプリン

こちらも人気のアップルダンプリン。カラメルソースをたっぷりつけて食べると、ほのかなブランデーの香りやナツメグやシナモンなどの香りがフワッと広がる。火を通してもリンゴがシャキシャキなのは、山で育てられたリンゴだからこそ。

焼きたてパンを運ぶ店員

訪れた時は、その日のベーカリーを焼くのに大忙し。それでも店員さんはみんなフレンドリーで、焼きたてのベーカリーを見せてくれる。「地元の人はもちろん、夏場はドライブ、冬場にはスキーをする人たちが必ずここに立ち寄ってくれるんだ」。寒い季節もここに立ち寄れば、身も心も暖かくなりそう。

足を運んで味わいたいカリフォルニアの味

この旅で出会った家族経営の小さなワイナリーとベーカリー。それぞれが家族の絆や地元の人たちとの交流をとても大切にしている。便利な世の中になっても、ネット販売もしていない。だからこそ、訪れた人たちを優しく丁寧に迎えてくれるのかもしれない。マーフィーでしか味わえない食に出会いに、あえて足を運びたい場所だった。

(Vol.2へつづく)

〈取材協力〉

カリフォルニア観光局 https://www.visitcalifornia.com/jp
ユナイテッド航空 https://www.united.com
カラベラス観光局 https://www.gocalaveras.com

写真・文=葛西 亜理沙
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