添乗員という仕事をしていると、ただただ、目の前の光景にお客様と共に心を奪われる。
そんな瞬間がある。
数あるそんな経験のなかでも、ひときわ思い出に残っているのは、南アフリカのクルーガ―国立公園を訪れたときだ。
ここでは、4WDのサファリカーに乗り、朝、晩とそれぞれ4時間ずつ国立公園内を走り、そこに住む野生の動物を探す。
どんな動物がいつ現れるのか全く分からない。
ドライバーと猟銃を持ったサファリガイドは動物の足跡や糞を手掛かりに動物を探す。
そんな中、ガイドが我々に目で合図を送る。
「何だろう?」そんな疑問が浮かんだ瞬間。
目の前に夕日に染まるオスライオンが現れた。
彼は我々には目もくれず、一心不乱にバッファローを食していた。
その光景に目を奪われ、誰一人声を発せず、皆、自然に溶け込んでいた。
我々も自然の一部になっていた。そんな瞬間だった。
「ツアーコンダクター・オブ・ザ・イヤー2016」グランプリ受賞時の筆者