アムステルダムの中心地にありながら、豊かな緑を満喫できるフォンデルパークは、地元の人々の憩いの場所です。芝生でピクニックをしたり、ベンチで読書をしたり、にぎやかな街から離れて穏やかな時間を過ごせます。カフェやレストランは観光客にも人気で、年間来園者数は1,000万人にのぼります。
フォンデルパークが人々に愛される理由は、その自由な雰囲気です。サイクリングやテニスなどのスポーツはもちろん、パーティー、ダンス、乗馬、弾き語りと、思い思いの楽しみ方ができます。インラインスケートで軽やかな技を披露する人、木の間にスラックラインを張って綱渡りをする人、晴れの日には水着で日光浴をする人もいます。
犬のリードを外すことも許可されているので、広大な芝生を駆け回ったり、池を泳いだり、犬たちも気持ちが良さそうです。
Photo: Stadsarchief Amsterdam
1970年代の「フォンデルパーク・プロジェクト」では、自由を謳歌するヒッピーたちに野宿の場が提供されました。アムステルダム市が「ホスピタリティと寛容」を世界にプロモーションし、ピーク時には2,000人のヒッピーがフォンデルパークに寝泊りしました。当時のランドリーと荷物預かり所は、現在ユースホステルになっています。
園内には150種類、4,700本を超える樹木があり、クロウタドリやシュバシコウなどの野鳥、ウサギやハリネズミ、昆虫、魚など、様々な生きものが暮らしています。
初春の花々や夏のバラ園、秋には木の葉が黄金色に染まり、四季折々の表情を見せてくれます。
住みよい環境のせいか野生化したインコも樹洞に住み着いています。 園内には子供たちのために、無料の遊び場やプールも設置されていますが、何よりの楽しみは自然との触れ合いです。
木登りをしたり、茂みの中に秘密基地を作ったり、工夫や試行錯誤を重ねながら子供たちの遊ぶ力が成長します。倒木は撤去されることなく子供たちの遊具に変身!
凍った池は天然のスケート場になりアイスホッケーやスケートをして遊べます。
フォンデルパークは中産階級向けのレジャースポットとして1865年に開園しました。造園家ヤン・ゾッハーにより、当時アムステルダムの周縁に位置していた荒れ地が、自然美を追求したイギリス風景式庭園に生まれ変わったのです。
音楽堂(1873年建造)
150年の歴史を誇るフォンデルパークには、国家遺産に指定された建造物が点在しています。旧公園管理事務所や、池面に佇む優雅な音楽堂はゾッハー自身が設計したものです。かつて上流階級の娯楽施設だったパビリオンは現在レストランに、旧公園管理人宿泊所は保育所に改装され、再利用されています。前述のユースホステルも、1969年まで家政学校として使用されていた歴史的建造物です。
ヨースト・ファン・デン・フォンデル像(1867年建造)
園内のパブリックアートも充実しています。公園名の由来となった17世紀の詩人、ヨースト・ファン・デン・フォンデルの像をはじめ、人種差別に抵抗する黒人女性の銅像など、15以上の彫刻作品があります。芝生のうえに空から落ちてきたような、パブロ・ピカソの『Figure découpée』もあるのでぜひ探してみてください。
4月27日の国王誕生日には園内がフリーマーケットで埋め尽くされ、5月~9月は野外劇場で無料のライブミュージックやダンスが上演されます。地元の人との交流を楽しみたい方は、ウォーキングやヨガのグループレッスン、スケッチや写真のワークショップなどに参加してみてください。ガイドと一緒に動植物を観察する「ネイチャーウォーク」も開催されています。
もちろん、予定を立てなくても楽しめるのがフォンデルパークの魅力です。お金をかける必要もありません。何事も、とりあえず気軽にやってみるのがアムステルダム流。芝生に寝転がって青空を眺めたり、フットサルに飛び入り参加したり、凍った池の上を滑ったり、気の向くままに自由な時間を過ごしてみてください。
◆フォンデルパーク
住所:Vondelpark, 1071 AA Amsterdam
トラム1,2,5,7,11,12,19番 Leidseplein下車徒歩4分