オランダでも有数の風車村ザーンセスカンス

オランダの風車村ザーンセスカンスの愛らしい風景

海外現地ライター便り
2018年09月28日
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海外旅行
旅行記

ザーンセスカンスはアムステルダムの北西15kmほどに位置する、オランダでも有数の風車村です。ザーン川の畔に立ち並ぶ風車は、草原とともに牧歌的な風景を織り成しています。村全体が野外博物館になっていて、17、18世紀のザーン地方の町並みが再現されています。2017年には220万人を超える訪問者で賑わいました。

村全体が17、18世紀のザーン地方の町並みを再現した野外博物館となっている

伝統的な木造家屋や跳ね橋、牧場、船着場、商人や漁師の家、時計やパン屋の博物館、チーズ工房やチョコレート工房、土産物店などがあり、一日中散策しても楽しみが尽きません。

木靴職人による実演

木靴や織物、樽工房では職人による実演が行われています。ザーン地方の歴史や文化を紹介するザーンス博物館も併設されています。

ザーンセスカンス最大の見どころは稼働中の風車

ザーンセスカンスの風車は現役として活躍し、製粉や製材、製油などに使用されています。内部を見学できる風車もあり、染料製造用風車『De Kat』もそのひとつです。風車の中では、ギシギシッ、ギシギシッと、木製の歯車が噛み合い、振動し、建物全体に力が漲っています。重さ15トンの羽根が風をうけ、木製の内部構造が軸を回し、人の手ではとても動かせない大きな石臼が、ミシミシッと音を立てながら、重々しく、けれど軽快に回ります。

染料製造用風車『De Kat』

小さな階段や梯子を上って屋外の足場に出ると、巨大な4枚の羽根が、頭上すれすれを勢いよく回っています。帆で風をうけとめ、グングンと回転する姿は壮観です。ザーン地方にはかつて55基の染料製造用風車がありましたが、現在は世界でも唯一、この『De Kat』を残すのみとなりました。

風車内にある原始的な石臼

電気機械に慣れた現代人にとって、自然の力を目の当たりにし、原始的な石臼で挽いた染料を手にするのは新鮮な体験です。

ザーン地方の風車は黄金時代の原動力

世界初の工業地帯であった17、18世紀のザーン地方

17、18世紀のザーン地方は世界初の工業地帯を誇り、オランダ黄金時代の発展を支えました。16世紀のクランクシャフトの発明は、鋸風車の製材技術を飛躍的に向上させ、17世紀にはヨーロッパにおける造船の中心地となりました。19世紀半ばの最盛期には、1,000基を超える工業用風車がザーン地方で稼動していました。
しかし蒸気機関の出現により、工業用風車は次第に姿を消し、1920年ごろにはわずか20基を残すのみとなりました。ザーン地方の工業用風車を保存するため、1925年にザーン地方風車協会が、後にザーンセスカンス財団が設立されました。

1961年から始まったザーンセスカンスの建設

1961年から始まったザーンセスカンスの建設は、ザーン地方に残存する風車や伝統家屋を、トレーラーや船で輸送するという大掛かりなものでした。さらに17、18世紀の文化や技術を継承するため、ザーンセスカンスの伝統家屋には人々が暮らし、風車守が風車を回し、工房では熟練の職人たちがものづくりをしています。ザーン地方の歴史と栄光を語り継ぎ、伝統技術を伝承していこうという人々の熱意によってザーンセスカンスは実現したのです。

愛らしい風景に出会えるザーン地方

ザーン地方にはザーンセスカンスの外にも、いくつかの風車が点在しています。

世界で唯一稼動する製紙風車『De Schoolmeester』

オランダに現存する最古の木造回廊風車『De Bleeke Dood』では、毎週金曜日に石臼挽きの小麦粉が販売されています。ウエストザーンに立つ、世界で唯一稼動する製紙風車『De Schoolmeester』も、色とりどりの紙を作る工房など、一見の価値があります。

水上からザーンセスカンスを眺めるクルーズもある

水上からザーンセスカンスを眺めるクルーズや、レンタサイクルでのザーン地方巡りもお勧めです。アムステルダムからのアクセスも抜群のザーンセスカンスに、ぜひ足を運んでみてください。
風車見学の日時や予約制の有無は、ザーンセスカンス(dezaanseschans)やザーン地方風車協会(zaanschemolen)のホームページでご確認ください。

文・写真=Kayo Temel
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