10-11月号の特集で訪ねた福井県。連日35度を超える猛暑のなか、新鮮な魚介類やおろしそばなど、今回もおいしい料理を堪能したが、そのひとつが油揚げ。 坂井市丸岡町にある「越前竹人形の里」を取材して、ではちょっとひと休みしましょうと、カメラマンと2階にある「旬の心」というレストランに向かった。
見よ! 迫力ある揚げ立ての油揚げ
ここは、県内では有名な「谷口屋」という油揚げと豆腐の老舗の支店。店内の一角で大きくて厚みのある油揚げを揚げており、その様子を見ながら油揚げがついた「油あげ御膳」や「十割おろしそば御膳」(「谷口屋」さんの表記は油あげ)などの食事が楽しめるようになっている。
ガラス窓越しに揚げる様子が見学できる
揚げ立ては、さぞや旨いだろう...と思ったが、すでに昼食は済ませた後で満腹。しかし、揚げる姿を見ていると、どうしても食べたい。すると、「単品もありますよ」と店員さんが声をかけてくれた。
テーブルにあるチラシ
「やったー!」ということで、注文したのが写真の見事な油揚げである。普段、東京で食べている油揚げよりも格段に大きい。天地左右が各約13cmもあり、厚さは約3cm。そして、ご丁寧にもテーブルには食べ方を解説したチラシも置いてある。それによると、まずは熱々の揚げ立てを「そのまま」食べ、次に「越前塩」につけて味わい、最後は薬味をたっぷりのせて「あげステーキのたれ」で賞味あれ...という。
その順番で食べると、まさに絶品! 表面はカリッとして香ばしく、中はサクサクふんわり。上品な菜種油と豆腐の生み出すハーモニーが絶妙だ。もちろん、揚げ立てということもあるが、なんといっても素材の良さが感じられる一品である。福井県は油揚げの消費量が日本一となっているが、なるほど、これほど旨い油揚げなら納得できると感心した。聞けば、1枚揚げるのに約50分というから、
そのこだわりは半端ではない。
ちなみに、「谷口屋」の創業は大正14年。今も、「あわてたらあかん。ゆっくりとゆっくりと」という初代の教えを守り続けているという。
たかが油揚げ、されど油揚げ。旨いものは旨い。じっくりと素材を吟味し、手間をかけたものがいかに旨いか、あらためて実感したひとときだった。