大人気ミュージカル「ハミルトン」ゆかりの地をご紹介！

2019年5月現在、ブロードウェイのミュージカルでもっともチケットが高く入手困難な『ハミルトン』。ハミルトンは、１０ドル札をみるとそこに顔が載っているアメリカ合衆国の初代財務長官です。なにやら歴史もので堅そうなのでパス！と思わないでください。とてもミュージカルらしい曲の数々に、ラップやヒップホップを取り入れたり、ワシントンやジェファーソンを黒人俳優が演じたり、米国初のセックススキャンダルが描かれていたり、笑える小ネタもふんだんに取り入れられたり。画期的かつエネルギッシュに、激動のアメリカ建国時代を分かりやすく描いた作品で、音楽的にも、ビジュアル的にもハマってしまう人が多い作品なのです。

このミュージカルの主役は、西インド諸島から移民としてニューヨークにやって来た若者、アレクサンダー・ハミルトン。独立戦争を戦い、イギリスから独立した後は、初代財務長官としてアメリカの礎を作り上げ、決闘により命を落とすという壮絶な人生を送っています。その他にも注目の登場人物は、初代大統領ワシントン（1ドル札）、第2代アダムス（2ドル札の裏面の一人）、第3代ジェファーソン（2ドル札の表）と副大統領アーロン・バー、第4代マディソン（5000ドル札）。これらのアメリカ建国の父たちは、ほとんどの人が後にお札になっています！昔は5000ドル札があったことや現在も2ドル札があることも驚きです。

さて、建国に際し大きな役割を果たしたハミルトンは、アメリカを愛するだけでなく、ニューヨークが大好きでした。「ペンは剣より強し」を地で行った彼は、当時ロウアーマンハッタンにあったキングスカレッジ（現在のコロンビア大学）で誰よりも早く、誰よりも多くのことを学んだといわれています。
そのロウアーマンハッタンにあるフランシス・タバーン（Fraunces Tavern）は、かつてハミルトンら建国の志士が集い、熱い議論を交わしたマンハッタン最古の酒場。現在も営業しており、1階のレストランでは食事やお酒を楽しめます。2階は独立戦争の歴史を伝える博物館で、観光客向けのウォーキングツアー（英語）も行われています。独立戦争に勝利した後、ジョージ・ワシントンが部下の将校たちに別れを告げたというロングルームには、歴史の息吹が感じられます。

ハミルトンは金融街にニューヨーク銀行を創立し、その跡地はアメリカ金融博物館となっています（災害による建物の劣化で2018年から休館中）。ちなみに独立戦争後にハミルトンが住んだ家の住所は、“57 Wall Street, New York”。それを記念するものは残されていませんが、金融博物館の向かいにあたります。そして、ハミルトンと最愛の妻イライザ、その姉アンジェリカ、ハミルトンと同様に決闘で亡くなった息子フィリップが眠るのが、トリニティ教会の墓地。ミュージカルの大ヒットにより、ハミルトンのお墓を見ようと、全米はもとより世界各地からの観光客が訪れています。

ハドソン川を挟んでマンハッタンの対岸にあるニュージャージー州ウィーホーケンにも、ハミルトンゆかりの地があります。ハミルトンと第3代副大統領アーロン・バーの決闘の舞台となった場所です。19世紀初めのニュージャージー州は、“Everything is legal”と言われるほど何でもありの場所。ここで、アーロン・バーはハミルトンを射殺してしまいます。ハミルトン、わずか49年の生涯。早朝に決闘が行われたという場所は、今ではマンハッタン行きの通勤バスが頻繁に通る商業施設の一角にあり、二人が銃を持って対峙する銅像が設置されています。

その西側に広がるこの地域独特の崖の上には、ハミルトンの名を冠したハミルトン・パークがあります。マンハッタンの息を呑むような夜景で有名な場所で、ツアー客が毎日訪れています。その公園の最南端には、ハミルトンの彫像が設置され、その下には銃弾に倒れたハミルトンの頭を乗せた石が置かれています。

現在このミュージカルはニューヨーク以外でも、シカゴ、サンフランシスコ、ロンドンで定期上演されています。全米各地へのツアーも行われており、金額もニューヨークよりは安いこともあり、生で観劇するチャンスが増えています。アメリカ建国時代の政治家の人間模様は、どことなく日本の幕末を思い起こさせます。アメリカ建国の歴史を知ってから、ミュージカルを観て、そしてそのゆかりの地を訪れると、あなたも「ハミルトン」にハマること間違いなしです！