あなどれない風土病“デング熱”
日本ではあまり馴染みのない疾患名ですが、
デング熱は、蚊に刺されることによって感染する疾患です。
20年のデング熱による死者数は32人と過去最多を記録し、
新型コロナウイルス流行に伴う20年通年の死者数29人を超えました。
なんと2022年もまた、20年のようなデング熱流行に見舞われる可能性があるのだそう。
今はコロナ感染症ばかりに完全に気がいってしまって忘れがちですが、
身近に忍び寄っている“デング熱”元凶の小さな黒い影。
実はあなどれない恐ろしい感染症なんです。
デング熱にかかった際、重篤(じゅうとく)化のサインや、
なぜ未だにワクチンや治療法が確立されていないのでしょうか。
世界で年1億人、7割がアジア
地元有力紙によると、デング熱ウイルスは1943年に発見されました。
いまだに有効な治療法やワクチンは確立されていません。
シンガポール国立大(NUS)医学部の微生物学および免疫学部門の責任者、
ケビン・タン准教授は19日に開催されたデング熱に関するウェビナーで、
デング熱は世界100カ国以上でエンデミック(風土病)として存在していると説明し、
「年間感染数は1億例以上に及び、うちアジアで70%発生している」と述べています。
高熱が数日続く
デング熱の典型的な症状はというと、デング熱は蚊を媒介にして感染。
通常感染後4~7日後に発症します。
典型的な症状は発熱と下痢、倦怠(けんたい)感、鼻血や歯茎からの出血、
筋肉痛、骨痛、吐き気、湿疹、目の痛みや頭痛。
デング熱に感染したかもしれないー。
そんなときどうするべきかというと、デング熱感染が疑われる場合は最寄りの
公営診療所(ポリクリニック)か一般医(GP)で診察を受けることが良策。
血液検査が必要になるという場合もあるのだそう。
患者の多くは発熱が3~5日続くといい、発熱が落ち着く3~6日目には、
血小板数が急激に減少するので危険な状態に陥りやすいのだそう。
患者は脱水症状に陥る可能性があるので注意深く観察する必要があります。
発症から7~8日後には血小板数が再び増加し始め、大半は回復に向かう傾向。
感染したら入院は必須?自宅療養では?
一般的に、重篤化の兆候が見られない場合、患者は入院の必要はないとされています。
ただ、腹痛、押すと痛い圧痛、度重なる嘔吐(おうと)、粘膜出血(鼻や歯茎からの出血)、
無気力または多動などの症状の場合は入院が必要だと言われています。
熱が引いてから48時間、また症状が改善し、血小板数が増加すれば退院できます。
自宅療養の際の注意点
自宅療養するデング熱患者は、
アスピリンを成分とする鎮痛解熱薬の使用を避けるようにアドバイスされます。
また、出血の可能性が高い接触するスポーツも控えます。
回復中の患者は、1日2~3リットルの水分補給が必要。
医療機関で毎日診察し、血液検査を行う必要があると言います。
救急外来を受診する必要のある症状は?
黒またはタール状の便、鼻孔や歯茎からの出血、呼吸困難、眠気や刺激への異常な反応、
血の気が失せる、肌が冷たいまたは湿っている、何度も吐く、激しい腹痛、吐血、血尿や
血便などの症状が表れたときは最寄りの救急外来を受診する必要があります。
なぜデング熱の治療法は確立されていないの?
NUS医学部のウェビナーでジャスティン・チュー准教授は、
デング熱治療法開発が難しい理由を3点挙げています。
デング熱ウイルスには4種類の血清型があり、
すべての種類に効果のある治療法開発が困難だといいます。
幼児や高齢者、免疫不全者がデング熱に感染しやすいため、
安全な治療法を確立するため時間がかかっています。
デング熱は急性ウイルス感染症であるため、感染初期に治療を行う必要があります。
しかし多くのデング熱患者は感染後3~4日が経過するまで診察を受けないことが多いため、
効果を発揮しにくいといいます。
なぜデング熱にはワクチンがないの?
デュークNUS大医学部の新興感染症研究者ルクランティ・デアルウィス博士は、
デング熱ワクチン開発が困難な理由について説明。
現在一部の人々にのみ接種可能なデング熱ワクチンDengvaxiaは、
過去に感染したことがない場合、ワクチンを接種した人のほうが未接種者より
感染リスクが高まるといいます。
また、デング熱は動物実験の結果も人体との反応が異なり、
人間のほうがデング熱感染で急激な症状を示すといいます。
将来治療法が確立される可能性はある?
デアルウィス博士は、武田薬品のTAK-003や、
米国立アレルギー・感染症研究所のTV003・TV005などの
現在開発中のデング熱ワクチンに期待していると述べています。
重症化するリスクがあるのにかかわらずい現状ワクチンも特効薬もないデング熱。
一切蚊に刺されないようにするというのも難しいのですが、
シンガポール国家環境庁は以下の対策を徹底するよう呼びかけています。
☑ ベランダの植木鉢の下にお皿を置かない(水たまりの原因となるため)
☑ ベランダのサッシやキッチンの水まわりなど、古い水が溜まらないように清潔にしておく
☑ 家の中の花瓶の水は定期的に入れ替える
☑ 室内の暗い死角に一日に何度か蚊よけスプレーを噴射する
環境庁職員が住居で蚊の繁殖がされていないかどうか、個人宅を抜き打ちで確認に回っています。
とは言え、みんながみんなが“蚊”に刺されることにいつも恐怖を感じながら
日々緊張した生活を送っているわけでもありません。
実際、シンガポールの街中にいると蚊に刺されることはほとんどありません。
特に緑の多い場所にお出かけの際に気を付けるとよい注意点は以下です。
☑ 長袖、長ズボンを履くなど肌を覆う
☑ 虫除けスプレーを全身に塗布する
シンガポールのドラグストアを覗くと必ず「蚊の対策グッズ」のコーナーがあります。
服の上から貼る虫除けシールや、全身用のスプレーなど、チェックしてみてください。
外出時にはお気をつけて!
☛ 在シンガポール日本大使館からのデング熱の発生数増加に関する注意喚起
https://www.sg.emb-japan.go.jp/itpr_ja/dengue.html
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オプショナルツアー(現地発着)JPY30,409〜※価格は予告なく変更になることがございます。期間: 2022-08-14~2022-08-14