JTB交流文化賞 Multicultural Communication
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JTB交流文化賞
交流文化が広げる未来
第8回 JTB交流文化賞 受賞作品紹介
交流文化体験賞ジュニア部門
優秀賞(小学校高学年(4〜6年生))
三世代家族旅行から学んだこと
唐木 映里花

(イメージ) 毎年夏休みになると、三世代家族で群馬県の温泉に泊まりに行くのが、我が家の恒例です。祖父母が毎年行きたい観光地を決めて、その場所を訪れ、温泉の湯を楽しみます。今年の観光地は、初日が水沢観音でした。坂東33番札所の第16番の札所であることや、推古天皇の頃に創建された、1300年の歴史を持つお寺であることを祖父が教えてくれます。

私は4月から社会の授業で、日本の歴史について勉強しています。今から1300年前の時代は、たしか聖徳太子が天皇中心の新しい国づくりを進めていました。また私が住んでいる近くには、坂東33番札所の第12番の慈恩寺観音がある事を思い出しました。「おじいちゃん、推古天皇の時代って、聖徳太子が活やくした時代でもあるよね。またお正月に初もうでする慈恩寺が、坂東33番札所のひとつで、水沢観音もそうなんだね。」と祖父に話しかけると、ほほ笑んでくれたのが印象的でした。

翌日は、足利学校に行きました。頂いたパンフレットには、室町時代頃に始まった「日本で一番古い学校」と書かれていました。足利学校のシンボルの「学校門」をくぐり、その先の「杏だん門」をくぐると、「孔子びょう」が見えました。祖母が足を止めて、「この中に大成殿があるのよ。論語に出てくる大切な方を祭っています。」と話したので、私はハッとしました。おそるおそる孔子びょうの中に入ります。正面を見ると木造の孔子の像がありました。その姿はとてもやさしい姿で、私は感動に包まれました。なぜなら私は、去年から論語じゅくで「論語」の勉強を始めていたからです。足利学校が孔子の教えを学ぶ学校なのだと分かり、私は神妙な気持ちになりました。

年に一回の三世代家族旅行ですが、私はいつも待ち遠しく思っています。色々な観光地に行ってきましたが、どこも素晴らしいところでした。今回の観光地を通して、祖父母が私の学年や習い事に合わせて、観光地を選び温泉旅行をしているのだと分かりました。

「おじいちゃん、おばあちゃん、とっておきの観光地をいつも選んでくれてありがとう。日本の歴史や文化そして、論語について深く考えることが出来ました。」と帰りの車の中で伝えると、二人は少し驚いた顔をした後に、照れ笑いをしていました。

きっと祖父母は、自分達が見たい観光地よりも、私に見せたい観光地を優先していたのです。だからまだ私の胸の中に秘めているけれど、大きくなったら祖父母の行きたい観光地に、私が招待したいです。それまで、長生きしてくださいね。おじいちゃん、おばあちゃん!

評価のポイント

毎夏恒例の三世代旅行。群馬県の足利学校に寄った際に、最近「論語」を塾で習い始めた孫である筆者のために、祖父母が旅行先を選んでくれたことに気付く。感謝の気持ちを伝えるとともに、いつかは自分が祖父母が行きたい旅行先に招待したいと心に誓う。お爺ちゃん、お婆ちゃんが旅を通じて孫の成長を見守る姿が目に浮かぶ心温まる作品。



※賞の名称・社名・肩書き等は取材当時のものです。