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若者に伝えたいんや!!
町工場のおっちゃんが熱く語る“モノづくりの心”

東大阪“モノづくり観光”活性化プロジェクト協議会(大阪府東大阪市)
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取り組みの背景や目指す目標 (イメージ)

河内の国と呼ばれていた東大阪は、古来より人々の交流の拠点でした。その交流の中でもたらされたのが、“モノづくり”の技術である。
東大寺の大仏を作ったのも河内鋳物師(かわちいもじ)といわれる職業集団で、その伝統は脈々と現在まで伝えられ、歯ブラシから人工衛星まで、各分野の全国トップシェアを誇る会社やユニークな製品を開発するオンリーワンの技術を持つ企業が集積している町として、世界的にも注目されている。これは、一朝一夕に習得できるものではなく、永い歴史の中で培われたモノづくりに対しての真摯で、真剣な姿勢の成果であり、このことが、町工場からの「人工衛星まいど1号プロジェクト」につながってきた。
しかし、最盛期には東大阪に1万社あった中小企業が、今や6千社。職人の平均年齢も60歳前後。このままでは大好きな東大阪がダメになってしまう、モノづくりの灯が消えるという危機感!
本協議会では、このような、世界が認めるモノづくり産業を核に、従来の地域資源も活かした『モノづくり観光』という新たなジャンルを軸に据え、地域一丸となって町を元気にするべく一生懸命取り組んできた。その中心的な取り組みは、人材教育の観点からの学生と地元とのマッチング事業である。
『人々が目指すハイテクの基礎は、東大阪に伝えられているモノづくりに対する真摯で、真剣な姿勢で向き合うことにある』という東海大学情報技術センターの坂田俊文先生のお言葉が示すように、金型技術など伝承されているものを忠実に守りながらも、メイドイン東大阪の人工衛星の打ち上げや、ナノテクノロジーの分野で注目される企業へと進化している『モノづくりと地元への熱い思い』を後世に伝えていくことを期してスタートした。
まさに日本が今失いかけている「モノづくり」の心を、これから人生を切り開いていく子供達に、その楽しさ、大切さ、また働くことの意味・意義を、町工場の職人がこれまでの生き様とともに直接語りかけるという独自プログラムを構築した。
【夢を持つこと、挑戦すること】をテーマとしたこのプログラムは、教育旅行の求めるまさに本質と受け入れられ、訪れた多感な生徒たちの心を揺さぶり、先生方、保護者の方にも大変な好評を博し、リピートに繋がっている。生徒たちとの交流の結果、寡黙な作業が美とされてきた職人にも、教える喜びという新たなモチベーションが加わり、生き生きとしてきたとの意見も頂くなど、地域に少しずつ活気が出てきており、後継者不足やモノづくり技術の伝承などの課題解決や、従業員及びその家族、そして東大阪の住民に「誇り」を取り戻すべく、【人が最大の観光資源である視点こそが活動の骨子】と肝に銘じており、その視線は東大阪に留まらず、大阪全体、日本全体、そして世界を見据え、今後も果敢に挑戦していくつもりである。

取り組み内容
  • (1)企画開発・商品化事業
      (イメージ)
    • ★東大阪“モノづくり観光”活性化プロジェクト協議会会設立(現在会員数51)
      東大阪の場合は、ショールーム化された工場ではなく、町工場の現場を見学する。そのためには、受入企業の理解と協力なくしては実現できないため、「東大阪のモノづくりの心を子供達に伝える!将来の東大阪のファンづくりを目指す!」という共通目標に賛同する企業・団体などに働きかけ、意識の共有化、情報交換の場としての標記協議会を設立し、運営している。
      〔会員企業:業種〕
      各種製造業、商店街、神社、博物館、大学、演芸協会、JA、信用金庫、旅行会社 他
      ⇒ それぞれがプログラムメニューを持っている
    • ★プログラム開発のための、新規受入施設の開拓旅行会社の全面的なサポートとメディアでの発信のお陰で、本プログラムが全国的に知られるようになり、お越しになる生徒数も本年度4月〜10月で5000名を超える状況である(前年比3倍増)。リピーターも多く、学校として本プログラムを修学旅行行程に入れることを決めていただいている学校も多い。そのような期待に応えるため、会員の新規加入促進を地道に続けている。また、堺等周辺都市など近隣の類似組織とも“モノづくり”を軸に連携し、受入体制の整備を進めている。
    • ★受入プログラムの充実
      参加者の意見も参考に、受入プログラムの充実も図っている。「モノづくり」を核としつつ、その周辺の集客素材を組み合わせたプログラムの開発を進めている。最近の例では、工業高校のデザイン科の生徒が、見学受入企業の商品デザインを企画提案。その企画の中で、商品化が可能と判断されたものは商品にするという双方向のプログラムも始まった。今後は、地元プロスポーツチームとの交流、地元大学の部活動体験など、モノづくりから拡大させたプログラムづくりも企画中。
      (その他)
      ◎企画委員会の開催
      ◎ワーキング委員会の開催
      ◎東大阪を中心とした東部大阪地域集客観光戦略の取り纏めビジョンの策定
      ◎「モノづくり観光体験プログラム」企画立案
      ◎旅行会社と連携した着地型パッケージ商品の造成と市場性検討
  • (2)観光・集客プログラム実施事業
    • ★モノづくり関連企業の経営者による講演会の実施
      工場を見学することに加えて、経営者に「モノづくりの心」をテーマの講演を実施頂く。共通のキーワードは、“モノづくりは真剣勝負”“夢を持つ”“挑戦する”“あきらめたらアカン”“挨拶が基本”など。生徒への影響もさることながら、先生が感激されるケースが多い。どの経営者の講演も琴線に触れる内容であり、まさに経営者の人生哲学を学ぶ場でもある。
    • ★学校・旅行会社とモノづくり現場を繋ぐコーディネート業務
      修学旅行の実施には100%旅行会社が関与するため、旅行会社の本プログラムの理解なくしては実現不可能である。協議会としては、学校現場への旅行企画提案の中に本プログラムをどのようにして盛り込むかが課題であり、そのため旅行会社営業スタッフの研修、下見などへの協力を積極的に行っている。
      受入企業は中小企業であるため、受入人数10〜20名が限界。また、生徒数が200 名を超える学校の場合は、班分けを実施し、10施設以上に受け入れを依頼する。ただ、修学旅行ピーク時には連日の申し込みであるため、施設に負担がかかり過ぎないよう、施設側の状況を把握しながら、可能なかぎり分散させるなど、細やかな調整をおこなっている。学校現場及び旅行会社と受入施設・企業の間を取り持つ仲人役が協議会の役割であると認識、活動の基本としている。
  • (3)人材育成事業
    • ★「モノづくり体験プログラム」講師及び観光ボランティア育成研修会の開催
    • ★受入企業のみならず、観光施設などへのホスピタリティー醸成研修会の開催
  • (4)情報提供事業
    • ★「モノづくりロード(仮称)」構想に向けたインフラ整備のため、案内ツールの作成
    • ★旅行会社同行プレゼンテーションの実施
    • ★各種マスコミとの取材対応

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※賞の名称・社名・肩書き等は取材当時のものです。