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第6回 JTB交流文化賞 受賞作品紹介
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田舎っぷりが大自慢!!「若狭三方五湖わんぱく隊」が“地域の誇り”へ…
社団法人 若狭三方五湖観光協会(福井県三方上中郡若狭町)
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取り組みの背景や目指す目標

干物つくり  1990年、一人の漁師の発案で「若狭三方五湖わんぱく隊」(若狭三方五湖版ツーリズム)の取組みは始まる。当時は未だ「海水浴ブーム」が続いており、日本全国から膨大な観光客が若狭の海にお越しになっていた。その活況により、漁村には「漁師民宿」が数多く現れていた。しかし同時に、漁村の高齢化、後継者不足が少しずつ進行し、その状況を克服したいという漁師の思いがこの取組みの原動力となった。当時“漁師の海”に他者が入り込むことは前代未聞、子どもたちに漁業を教えることも初めてのことであったが、「漁師という仕事、生業としての海を子どもたちに伝えたい」という熱意が学校にも伝わり、以降、学校数・受入れ人数ともに増加している。
  1990年当時、他地域には例がなかったこの取組みを21年間継続してきたことは、学校および旅行会社との信頼関係をより強固にしていると同時に、漁村・漁師としての誇りが地域に生き続けている大きな要因ともなっている。

取り組み内容
@ 海湖川里山がそろった若狭特有の自然環境を利活用したツーリズムを展開していること
A 1990年に開始、21年間継続させていること
B 当初より黒字運営であること
C 生業としての農林漁業をプログラム化し、インストラクターは全て地域の生活者であるこ
D インストラクターには必ず報酬を支払っていること

上記5点が、若狭町(福井県南西部、人口約16,000人)で行っている「若狭三方五湖わんぱく隊」(修学旅行・団体客向け)の取組みのポイントである。
  (社)若狭三方五湖観光協会は、1990年の岐阜県中学校の漁業体験学習受入れを契機に、ラムサール条約登録「三方五湖」を含めた、海湖川里山がすべてそろった若狭特有の自然環境を利活用したツーリズム「若狭三方五湖わんぱく隊」の活動を開始した。「地域の生活者が主人公」であり、「若狭でしかできないツーリズム」を提供するこの取組みは、本年で21年目を迎える。受入れは主に5つの漁村において1泊以上の宿泊を伴って行われ、インストラクターは全て地域の生活者であり、地域の生業・誇りをゆっくりと時間をかけて伝えることを大切にしている(1漁村に1校のみ、の受入れ)。5つの漁村それぞれに設けたツーリズム専用の「組合」が漁村内の各種調整を行うという体制で活動している。小中学生のプログラムには「生活者との語らい」の時間を必ず設け、後の感想には“おっちゃん・おばちゃんとの話が一番楽しかった”との感動が圧倒的に多いことは特筆できる。
  岐阜県・愛知県・滋賀県・京都府・大阪府など都市の小中高生に「若狭三方五湖わんぱく隊」としてお越しいただけることは、地域の“おっちゃん・おばちゃん”にとっても大切な交流の機会となっている。漁村の公民館で、地域の漁師が集まって若狭の漁業について紹介したり、合唱コンクールやコンサートを行ったりする時間を共有することで、都市の子どもたちと地域の生活者の関係は驚くほど親密になる。後日、その様子が写真となり礼状などが届くと、漁師民宿にはそれらが誇らしげに玄関などに飾られる。受入れ時だけではない「心のつながり」が常に地域に生き続けている。
大敷網漁見学  「若狭三方五湖わんぱく隊」では、主として農林漁業体験をメニューとしている。農林漁業は若狭三方五湖という地域にとって文化そのものであり、これまで大切にしてきた地域の歴史・生活者の宝物であるからである。大敷網漁(大型定置網漁)、干物つくり、田植え・稲刈り、農作物栽培など、すべて地域の生活者(漁師、農家)の日常を体験するプログラムを準備している。近年は湖・海の環境学習として…

@ 湖の富栄養化が原因の一つとして考えられている“ヒシ”(一年生植物、実は茹でて食べられる)の三方五湖での異常繁茂について考え、ヒシを刈るツアーを企画している。刈ったヒシの実はおいしく食し、湖の窒素・リンを含んだ藻は畑の堆肥として利用するという、環境保全しながらおいしい体験をしてもらう内容となっている。

A また秋季・冬季には、日本国内各地やアジア諸国から流れ着く漂着物や多種多彩な海藻を使ったアート作りや、「エチゼンクラゲ(大型クラゲ)」ツアーを若狭湾で実施、大型クラゲに手で触れながらそれが漁業に及ぼす甚大な被害やクラゲ大量発生の原因を考えてもらい、若狭の海には四季があることや、アジアと日本のつながりを若狭の海から学ぶ内容となっている。

…のようなメニューを新たに作っている。

  上記活動に加え、2007年に個人客向けツアー「若狭三方五湖まるかじりツーリズム」を開始した。これらのプログラム実施には、農林漁業はもちろん環境教育や地域史学習などの専門的知識を必要とするものも多く、地域内連携が必要不可欠である。よって、NPO法人里豊夢わかさ(里地里山保全活動)、ハスプロジェクト推進協議会(三方五湖の環境保全活動)、国立若狭湾青少年自然の家、福井県海浜自然センターなどとの相互協力のもと、ツアー受入れを行っている。
  2009年には「三方五湖学生環境サミット」を開催(主催は学生らの実行委員会)、国内各地から大学生が集まり三方五湖の利活用について提言がなされた。三方五湖をはじめとする若狭の自然環境を、環境学習・研究の拠点として位置づけられたこの取組みは、地域にとっても大きな自信となっている。


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※賞の名称・社名・肩書き等は取材当時のものです。