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第1回 JTB交流文化賞 受賞作品紹介
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新潟最北の城下町「村上」 明日をかけた市民まちづくりの挑戦
新潟県村上町屋商人(あきんど)会、チーム黒塀プロジェクト、むらかみ町屋再生プロジェクト
 新潟県最北の城下町、村上。人口3万。近くに瀬波温泉を持つこの町はここ数年で「町屋」の城下町として一躍注目を集めるようになり、全国から観光客が押し寄せるまちへと変わってきた。
 村上には武家屋敷、町屋、寺町、城(跡)という城下町としての四大要素が残っており、全国的にも希少な城下町であると高い評価を受けていたが、地元ではそのような価値認識は極めて低かった。商店街は活気を失っており、観光からも縁遠く、何をやっても駄目と言われていた、そんな折に町屋の多く残る商店街(旧町人町)に道路拡幅を伴う大規模な近代化計画の話が持ちあがった。
 その時、「町を整備しきれいにすることが、本当にこの町の繁栄に繋がるのか」という一人の若者の疑問から、この町屋再生の取組みが開始された。
 まず、全国の町を見て歩き、道路を拡幅し整備した商店街で栄えたところは一つもないことに気付き、この町人町に残る古い町屋を活かすことで町に賑いを取り戻すことを主張した結果、市民の意識が変わり、この町屋を活かす取組みが開始された。
 村上の町屋とは間口が狭く奥行きが長い「うなぎの寝床」と称される伝統的な家屋である。外観こそ近代化の波を受けているが、一歩奥に進むと、囲炉裏や梁、大黒柱に神棚、仏壇、豪快な吹き抜けの造りが現れ、江戸や明治の町屋が現れる。この町屋の生活空間である内部こそが村上の宝であった。本来、町屋の中は生活空間であり、お客に見せるような場所ではなかったが、結果20軒ほどの仲間が賛同し、この生活空間を公開する取組みが始まったのである。こうして平成10年夏、町屋のマップを作り、村上町屋商人(あきんど)会による 「町屋の公開」が始まったのである。

 平成12年には、町屋の中にその家に伝わる雛人形をはじめ武者人形、土人形、市松人形など江戸から現代までのさまざまな人形さまを展示披露する「町屋の人形さま巡り」を企画した。60軒ほどの町屋で、すべて無料で公開する画期的なイベントであった。

 この催しに来られた人達に大変喜ばれることになった3つのポイントは、(1)「町屋」が素晴らしい (2)「人形」が素晴らしい (3)村上の人の「人情」が素晴らしい であった。特に(3)については、行く家、行く家どの家でも一生懸命説明してくれることに加え、お茶まで出してくれるなど、どうして村上の人はこんなに親切にしてくれるのですかと大変驚かれた。

 平成13年秋には、「町屋の屏風まつり」として、家伝のさまざまな屏風を60〜70軒の町屋の中で公開する企画を実施した。金屏風、書の屏風、混ぜ張り屏風に枕屏風などさまざまな屏風が出され、屏風とともに生け花が添えられ、重箱、大皿、漆器などお道具 や調度品までが飾られ、人形さま巡りとはまた違った格調高い雰囲気を漂わせ、城下町の 町人文化を伝える見事な催しとなった。

 「人形」「屏風」による町おこしを立ち上げた後は、平成14年、小路(安善小路)を更に美しくしようとする景観形成の取組みとして「黒塀プロジェクト」を開始した。味気ないブロック塀を昔ながらの黒塀に復活させるために市民が一体となり「黒塀一枚千円運動」をという寄付を集め、160 m の黒塀を作った。 黒塀プロジェクトに引き続き、市民有志で新たな「町屋の外観再生プロジェクト」を開始する。これは全国の人によびかけ基金をつくり町屋の外観を再生する店に補助金を出すという市民プロジェクトとして全国初の取組みであっ た。改修は外観だけであるため低経費ですみ、一方 町並みの趣きは大きく向上する。

 また、JRが人形さま巡りに合わせたSL運行や、町屋外観再生プロジェクトの一環として村上駅の大規模な改装をするなど、全面的に村上町の取組みに協力したことも大きなポイントであった。
 近代化問題に端を発し「町屋を守れ」と始まった一連の取組みは、地域の文化を見直す大きなきっかけとなり、地域の宝を発掘することになった。それまで日陰の存在であった町屋が今では市民の誇りに変わり、同時に地域活性化の起爆剤となり、町屋を中心軸として頑張る人達が増え、大勢の市民が関わる村上あげての一大プロジェクトに発展することになった。このように村上は町づくりを通じて、教えられ、学びながら着実に成果をあげ前進し続けている町である。


評価のポイント
「まちづくり」というテーマにおいて、町屋の内部のアピールに加え、外観の再生プロジェクトなど自分たちの町をよく理解しており、観光地としての「村上」を磨き上げた。

受賞の言葉
近代化問題に端を発し「町屋を守れ」と始まった一連の取り組みですが、地域の文化を見直す大きなきっかけとなり、地域の宝を発掘することとなりました。日陰の存在だった町屋が、今、市民の誇りに変わり、同時に地域活性化の起爆剤となっているのです。そして大勢の市民が関わる、まさに村上あげての一大プロジェクトに発展してきたのです。
大勢の人が訪れたことで、市民が我が町の文化的価値に気づき、誇りを持ち始めたことは大きな収穫でした。また訪れた人には、生活文化を披露し、損得抜きでもてなす村上の市民性が感動を与え、今までにない観光だと喜ばれるようになりました。文化を通じ、訪れた人に喜ばれ、喜ばれたことが地元の人の誇りにつながり、交流することではじめて見いだせる価値があり、それが地域の再生の大きな力になると実感しました。
今回の受賞を励みに、これからも活力があり地域独自の文化が香る誇りある町を作っていくべく一生懸命取り組んでいきたいと思っています。貴重な賞を頂きまことにありがとうございました。

新潟県村上町屋商人(あきんど)会
チーム黒塀プロジェクト
むらかみ町屋再生プロジェクト

※賞の名称・社名・肩書き等は取材当時のものです。