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第1回 JTB交流文化賞 受賞作品紹介
交流文化賞
優秀賞
「究極のグリーン・ツーリズム」を標榜する達者村
青森県名川町観光振興課(現南部町農林課グリーン・ツーリズム推進室)
青森県南部の「さくらんぼの里 名川町(現南部町)」に地図上には存在しないバーチャル・ビレッジ(擬似農村)がある。それが日本一面白い村、そして中高年層の楽園と「究極のグリーン・ツーリズム」を標榜する「達者村」である。

 名川町のグリーン・ツーリズムの原点は古く、20年続いている「さくらんぼ狩り」がスタートであった。周囲を山々で囲まれた盆地に位置する当町は、古くから果樹栽培が盛んであり、特にさくらんぼは県内一の栽培面積、収穫量を誇っており、地域振興の起爆剤とするべく、農業体験や郷土料理、南部手踊りといった地域文化を生かした「名川型交流」が確立されていった。


 これをきっかけに、地域の人々がアグリビジネスの可能性に目覚め、平成3年度に農産物直売施設「名川チェリーセンター」のオープンと首都圏旅行客にふるさと体験ツアーの実施、平成5年度には、首都圏からの農業体験修学旅行の受け入れを開始し農林水産省からの「グリーン・ツーリズムモデル整備構想策定地区」の指定をされた平成14年度からは「通年農業観光」がスタートし、平成15年度からは、通年農業観光への誘客を図るために東北新幹線八戸駅開業に合わせた八戸・名川間無料シャトルバスの運行など、さまざまな交流事業を積極的に展開するとともに、そのための条件整備を図っていった。
  また、県においては、従来の観光地巡りの旅行ではなく、そこに住む人々の生活や文化に触れていただくことで得られる「感動」や「知的体験」にスポットを当て、これを動機付けとしたリピーターを創出し、行く行くは長期滞在・定住に繋げていこうという「青森ツーリズム構想」が練られていった。それらを具現化するものとして「あおもり達者村開村モデル事業」が計画され、開村の地として名川町に白羽の矢が立ったのである。

「達者村」とは、「農林水産業を活用した新しいツーリズム(青森ツーリズム)を確立するため、首都圏の中高年層を主なターゲットとして、ニーズの高い「土いじり」や「農村体験」などを通じて名川町固有の資源や町民とのふれあい、来訪者と住民との関係を深めていこうというバーチャル・ビレッジ(擬似農村)である。

これまでの主な活動としては、「達者村」をテーマに新たに生み出された「達者村特産品認証事業(食べたり使ったりすることで達者になれる特産品認証)」「達者村三十六景(眺めるだけで達者になれるような町内のビューポイントの選定)」をはじめ、首都圏等在住の方々と達者村を舞台とした生の交流を通じた調査のための「モニターツアー」などがある。

 また、県が農家民宿の規制を緩和することで農業体験修学旅行を積極的に受け入れており、生徒との触れ合い、交流が盛んである。
  また、農業分野での雇用創出を目指して「農業インターンプロジェクト」を実施し、各地から就農意欲溢れる人々の研修を受け入れている。
  名川町のグリーン・ツーリズムとしてのさまざまな取組みに加え、「達者村」という新しい取組みについては、常に「都市住民」「回帰」といった視点を持ち続けることで、達者村づくりが最終的に都市と農村の共生、あるいは都市と農村のコラボレーションに繋がる。全国的に農村回帰への動きが活発化しており、定住支援策や受け入れ体制の整備が急がれるところであるが、より住み良い町づくり、よりオープンに都市部住民を招き入れる施策展開を図ってきたことが名川町「達者村」の特徴といえる。


評価のポイント
 農業体験、農家民泊だけでなく、町全体でスローライフを目指し、ミドルエイジ向けのリタイヤ後の長期滞在プラン、農業雇用促進のためのインターンプロジェクトなどグリーン・ツーリズムとしての裾野が広い。

受賞の言葉
記念すべき第1回目の「JTB交流文化賞」において、「究極のグリーン・ツーリズム」を標榜する当町の「達者村事業」が優秀賞を受賞できましたことは、誠に大きな喜びであり、関係各位に厚くお礼申し上げます。また、事業推進に向けて日々積極的、そして継続的なご支援をいただいております青森県を始め、「あおもりツーリズムアドバイザー」、地域住民及び関係団体各位に深く感謝申し上げる次第であります。
  地元にある素晴らしい人的・文化的資源の数々を活用した新しい交流の模索が、この度の受賞という結果を生んだことは、事業を継続する上で私共の何よりの励みとなり、より一層充実した村づくりにつながるものと確信しております。
今後とも地域一丸となり、「達者村」情報の積極的な発信に努めつつ、お客様の「オリジナリティ溢れる旅」の舞台となるよう魅力ある地域づくりを推進して参りますので、なお一層のご支援を賜りますようお願い申し上げます。

前・青森県名川町長 工藤祐直

※賞の名称・社名・肩書き等は取材当時のものです。